画像の真正性判定について
最近、AIによる画像の真贋判定が度々ニュースになっていますが、判定に使われる技術の多くはは深層学習(ディープラーニング)を基盤にしています。この技術は高い精度で判定するものの、厳密な真正性判定を与える訳ではありません。
一般的に画像の厳密な真正性判定には、オリジナル画像との照合、或いは画像ファイルとは別の判定用データファイル(以下、署名ファイル)が必要になります。前者は、オリジナル画像の保管・運用のコストが課題となり、また、後者は、画像ファイルと署名ファイルの分離保管に関わる問題が内在しています。例えば、署名ファイルの喪失や誤った操作による署名ファイルの改変などにより、画像ファイルが真正にもかかわらず本物として扱われないことが挙げられます。
以下に述べる画像の真正性判定は、画像とデジタル署名の一体化技術(mRS署名)を利用するもので、検証に署名ファイルやオリジナル画像の保管/照合は不要になります。
mRS署名とガロア画像
modified RS署名(mRS署名)は、Reed-Solomon(RS)符号と楕円曲線デジタル署名アルゴズム(ECDSA)を組み合わせたデジタル署名で、弊社が独自に開発したものです。mRS署名が埋め込まれた画像をガロア画像と定義します。ガロア画像は、画像とデジタル署名が一体化していますので、ガロア画像だけでその真正性が検証できます。また、原理的には動画にmRS署名を埋め込むことも可能です。
ガロア画像は、偽造・改ざんだけでなく非ファイル複製も検知できます。
なお、ガロア画像のファイル形式ですが、png形式、jpeg形式、bmp形式、tiff形式、gif形式などほとんどの形式に対応しています。
この技術につきましては、電子情報通信学会の研究会で発表しています[1]。
[1] 先名健一、“ 誤り訂正符号とデジタル署名を用いた斬新な画像認証スキーム”, 信学技報, vol. 123, no. 134, EMM2023-28, pp. 91-96,2023.7
ガロア画像の生成
次のステップは、ガロア画像生成の概略です。
1.署名情報(署名者、タイトル、日時など)を基にRS符号の生成
2.画像のLSBにRS符号の埋め込みとデジタル署名値の生成
3.RS符号とデジタル署名値よりmRS署名を生成し、その埋め込み
ガロア画像の検証
ガロア画像の検証は、概ね次のステップになります。
1.ガロア画像からmRS署名の取得
2.mRS署名よりRS符号とデジタル署名値の取得
3.デジタル署名値と公開鍵より画像の真正性を判定
ガロア画像の応用例
デジタル修了証明書
システム構成は、ガロア画像型修了証明書の生成・発行と検証からなります。証明書の発行者は、PDF形式の修了証明書を画像に変換し、それを上記手法によりガロア画像を生成します。このガロア画像は、当該ユーザに発行され、その後必要に応じて発行者の運営するサーバにアップロードすることで修了証明書の真正性が検証できます。このように、証明書発行者はガロア画像検証ページをWebサイトに設けるだけでよく、画像データの保管や登録データとの画像照合処理から解放されます。また、発行後の修了証明書はエンドユーザの管理下に置かれることになります。
なお、修了証明書に対する署名と検証は発行者側が行いますので、署名・検証に使われる秘密鍵と公開鍵は発行者が生成するもので問題はありません。従って、有料の電子証明書が不要になりコスト軽減につながります。
ガロア画像と検証結果のサンプル
上図(上)のガロア画像を画像検証のWebサイト Image Verification にアップロードすると、上図(下)のような真正性判定(Result)と署名情報がWebブラウザに表示されます。
※これは弊社がサンプルとして、画像の色付けを行い署名したもので、証明書発行者はこの署名に関与しておりません。